人でない時間

空を見ていると、自分が宙に浮いている

みたいな気分になることがあります。

どうして見ているだけなのに、

そんな気分になるのか不思議です。

この時は、自分の姿も消え、空の一部になったように

感じます。

気持ちも穏やかで、さっきまで

何を考えていたのかも忘れています。

この瞬間、僕は鳥のような感覚になるわけではなく、

空に取り込まれているのだと思います。

その間、どれだけの時間が経過するのでしょう。

声をかけられ我にかえると、僕は人に戻ります。

人でない時間があるから、人でいる時間を

大切にできるような気がします。

意味不明な声

一人でいる時には、誰とも話す必要がないので、

黙っているのが普通ですが、

僕はつい、雄叫びを上げたり、

こだわりの言葉を言ったりしてしまいます。

それは、気分が解放されるからだと思います。

どんな時でも、声をコントロールすることは、

僕にとって簡単ではありません。

一人でいる時、声を出して自分自身に話しかける人は

いないと思いますが、ため息や独り言をつぶやくことは

あるのではないでしょうか。

それと似ていると思います。

自由にしていい時、

僕は意味不明な声を出しています。

カラオケ

僕は、時々支援員さんとカラオケに行きます。

普通の会話をするのは難しい僕が、

歌を歌えるのを不思議に思う人も

いるかもしれませんが、

会話ができないのに歌は歌える

という重度の自閉症者は多いです。

このような人は、意味不明な独語を話したり、

オウム返しで話したりすることもあります。

歌を歌っている間、僕は歌詞の中の

主人公になった気分で楽しいです。

つかの間ですが、自分がヒーローになれたり、

憧れた環境の中で生きたりすることが

できるからです。

文字の形

僕は、文字の形そのものを見て、

おかしくて笑ってしまうことがあります。

漢字の角のかくかくした角度は

字によって違いますが、とんがっているものは

怒っているように見えます。

ひらがなの丸みが可愛く見えたり、

点の部分が寂しそうに見えたりもします。

文字にも性格があるような気がするのです。

絵や写真を見るのが好きな人がいるように、

文字の形に惹かれる人もいると思います。

声の大きさ

僕は、声が大きいです。

うるさくないのかと聞かれると、僕自身は

うるさいと思ったことはありません。

自分で自分の声がうるさいと思う人は、

あまりいないのではないでしょうか。

それが奇声でも、こだわりの言葉の繰り返しでも、

僕は、自分の声がうるさいとは感じません。

しかし、他の人の声だと、大きい声はうるさいです。

相手が自閉症者でも、普通の人でも、

うるさいものはうるさいです。

だから、僕の声も、うるさくてすみません。

プロフィール

東田直樹

Author:東田直樹
会話のできない重度の自閉症。自閉症、絵本、詩集など20冊の本を執筆。東京大学(2回)、福岡女学院大学ほかで、講演会を開催。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助無しでのコミュニケーションが可能。

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