僕は、昔、自分が普通の子供になった夢を、よく見ていました。

夢の中の僕は、みんなの中で、いつも笑っていて、楽しそうにおしゃべりしたり、

冗談を言い合ったりしています。

これまでの自分のことなんて全て忘れ、もう一人の僕が、この世に存在している

かのような感じなのです。

そして、目が覚め、我に返ります。

ここがどこだか、自分が何をしているのか、まるでわかりません。

夢であることを理解した瞬間、僕の目から大粒の涙が、こぼれ落ちていました。
 
夢は、時に残酷です。
 
現実世界では、決して実現できないことも、夢の中では簡単に叶うからです。
 
目が覚めた時、一瞬、夢か現実か迷うことはありませんか。
 
ふたつの人生の岐路に立っているような感覚で、身動きできないのです。
 
しかし、どれだけすばらしい夢でも、必ず最後には現実世界へと引き戻されます。
 
僕は、目をこすりながら、布団から起き上がります。

不思議なのは、夢の中の僕をうらやましく思いながらも、今の僕に戻れて、

どこかでほっとしている気持ちがあることです。

夢の中の僕が、本当の僕ではないことに気づいたからです。

心の中に、障害者でない自分への憧れがあったのかもしれませんが、

それは、映画の主人公に憧れる幼い子供と同じです。

夢は、自分を見直すためのまぼろしで、

僕の生きていく世界は、ここだけなのです。


プロフィール

東田直樹

Author:東田直樹
会話のできない重度の自閉症。自閉症、絵本、詩集など20冊の本を執筆。東京大学(2回)、福岡女学院大学ほかで、講演会を開催。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助無しでのコミュニケーションが可能。

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