洗濯物

外の洗濯物を、夕方家の中に入れるのは、僕の仕事です。

先日、僕が洗濯物を入れようとすると、小雨が降って

いました。

本当なら、すぐに洗濯物を取り込まなければいけなかった

のですが、僕はそのままにしてしまいました。

夜になって、雨がひどくなりました。

僕が雨戸を閉めようとすると、外にある洗濯物が

目につきました。

それでも、僕は洗濯物を家の中に入れることが

できませんでした。

その時に思ったのは、洗濯物がどうして外にあるのだろうと

いうことだけです。

雨なのに、洗濯物が外にあるのがおかしいと考えたわけでも

ありません。

さっきから、ザーザー聞こえていた音が、ようやく雨の音だと

いうことに、僕は気づきました。

それでも、洗濯物がぬれるから入れなければとは考えませんでした。

雨を見て「雨、雨」と大声で言っていると、母が何か察したらしく、

「まさか、洗濯物入れてないんじゃ」と言って、とんできました。

「雨が降っていたら、すぐに入れないといけないんだよ」

と注意された僕は(そんなこと知っている)と思いました。

そして、びしょびしょにぬれた洗濯物を母が取り込んでいるのを見ながら、

どうして、そのままにしたのだろうと、初めて考えました。

一番の原因は、洗濯物を入れる時に、雨が降っていたからです。

僕がひとりで取り込む時に、雨が降っていることはありません。

雨が降りだしたら、母が先に気づいて、急いで洗濯物を家の中に

入れるか、「雨が降ってきたから、洗濯物を入れて」と、母が僕に指示

してくれるか、だからです。

今日は僕が「洗濯」と言って2階に上がって行ったので、いつも通り

取り込んだと、母は思い込んだのでしょう。

雨を見たとたんに「外に出てはいけない」スイッチが、僕の頭に

入ったのだと思います。

雨の日にベランダに出てはいけないというルールが、僕の中に

でき上がっていたのではないでしょうか。

すると、そちらの方が優先されて、後のことは、全てなかったことの

ように、頭の中で処理されてしまうのです。

だから、雨にぬれた洗濯物を見ても、テレビを見ているような感じに

なってしまったのでしょう。

自分で判断して行動するのは、こういう大変さがあるのです。


プロフィール

東田直樹

Author:東田直樹
会話のできない重度の自閉症。自閉症、絵本、詩集など20冊の本を執筆。東京大学(2回)、福岡女学院大学ほかで、講演会を開催。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助無しでのコミュニケーションが可能。

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