物語

みんなが、楽しめる物語というのは、

ありのままの事実を書けばいい

というものではありません。

僕は、物語に大切なのは

「救い」だと思っています。

その作品を読んだ後、

どのような気分になるかということです。

ハッピーエンドかどうかは、問題ではないのです。

読んで良かったと思えるのなら、

それが楽しめる物語ではないでしょうか。

物語とは、作ったお話です。

読む人のことを考えて書く。

そんな作家になりたいです。 

いつの間にかそうなった

【いつの間にかそうなった (物語)】

ぞくぞくするような月夜でした。

女がひとり、橋の下に立っていました。

外にいるのは、野良猫だけです。

その様子を、家の窓から見た村人が、

「あれは、幽霊に違いない」と言い出しました。

「俺は信じていないけどね」と男たちは胸を張り、

「そんなの嘘に決まってる」と女たちは噂しました。
 
やがて日暮れが近づくと、誰も外に出なくなりました。

子供たちは聞きました。

「どうして夜、お外に出てはいけないの?」

大人たちは答えました。

「みんなが外に出ないから」

こうして、またひとつ、新しい村の掟が生まれました。

プロフィール

東田直樹

Author:東田直樹
会話のできない重度の自閉症。自閉症、絵本、詩集など20冊の本を執筆。東京大学(2回)、福岡女学院大学ほかで、講演会を開催。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助無しでのコミュニケーションが可能。

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