読ませる力

僕は、物語を読んでいても、

どちらかというと、書き手の気持ちに

なってしまいます。

作家がどういうテクニックを使っているか、

なぜ、そう書いたのかなどに興味を持ちます。

物語に浸っていても、

少しでも気になる箇所があると、

どうして、こんな書き方をしたのか

理由が知りたくなります。

しかし、作者に尋ねることは出来ません。

僕は、自分なりに書き直そうとしますが、

作者より素晴らしい話は書けないのです。

物語というのは、全部を正しく書けばいい訳ではなく、

全体を通して読ませる力が大切なのだと思います。

空想

外に出ると、子供からお年寄りまで、

いろいろな人を見かけます。

僕は人の表情を、よく見ています。

その人が、どんな気持ちでいるかということはわかりませんが、

嬉しそうだとか、寂しそうだとか、怒っていそうだとかは

何となくわかります。

次に、その人が、どうしてそんな顔をしているのか、

考えてみます。

考えても、わかるはずはありませんが、僕なりの理由を

思い描くのです。

たくさんの人を見かけた時には大変です。

印象に残る人だけ選んでも、僕の頭は、人だらけに

なります。

その人が、今している表情の一場面だけでも、

場面設定やセリフを考えることに大忙しになるのではないかと

心配されるかもしれませんが、それは大丈夫です。

ひとりか、ふたりの人の表情の理由を考えれば、

あとは僕の脳が勝手に、順番にその人のお話づくりを

やってくれるからです。

僕は、ただ空想にふけっていればいいのです。

物語

みんなが、楽しめる物語というのは、

ありのままの事実を書けばいい

というものではありません。

僕は、物語に大切なのは

「救い」だと思っています。

その作品を読んだ後、

どのような気分になるかということです。

ハッピーエンドかどうかは、問題ではないのです。

読んで良かったと思えるのなら、

それが楽しめる物語ではないでしょうか。

物語とは、作ったお話です。

読む人のことを考えて書く。

そんな作家になりたいです。 

いつの間にかそうなった

【いつの間にかそうなった (物語)】

ぞくぞくするような月夜でした。

女がひとり、橋の下に立っていました。

外にいるのは、野良猫だけです。

その様子を、家の窓から見た村人が、

「あれは、幽霊に違いない」と言い出しました。

「俺は信じていないけどね」と男たちは胸を張り、

「そんなの嘘に決まってる」と女たちは噂しました。
 
やがて日暮れが近づくと、誰も外に出なくなりました。

子供たちは聞きました。

「どうして夜、お外に出てはいけないの?」

大人たちは答えました。

「みんなが外に出ないから」

こうして、またひとつ、新しい村の掟が生まれました。

プロフィール

東田直樹

Author:東田直樹
会話のできない重度の自閉症。自閉症、絵本、詩集など21冊の本を執筆。東京大学(2回)、福岡女学院大学ほかで、講演会を開催。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助無しでのコミュニケーションが可能。

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